「稼ぐ力」と「集客」をサポート、苦境を越えた夫妻が 「GoodWork 首里」に込めた願い

首里城から車で5分ほどの高台に佇む多目的レンタルスペース「GoodWork(グッドワーク)首里」。那覇の街を見渡せる眺望とスタイリッシュな空間が、心地よい時間を運んでくれます。運営するのは、ホームページ(HP) 制作や集客支援を手掛ける有限会社オービックです。

ウェブ制作会社がなぜ、こんな素敵なスペースをつくったの?
「GoodWork 首里」で何ができるの?
オービックってどんな会社?

そんなアレコレを、オービック代表取締役の稲嶺盛裕さん、取締役の真栄田久子さんご夫妻にインタビューさせてもらいました。

(聞き手・佐藤ひろこ)

「GoodWork 首里」をつくったわけ

―シンプルでスタイリッシュ!心静かに自分の考えを整理したり、新しいアイデアが生まれたりしそうな、とても心地良い空間です。それでいてWi-Fiやモニター、ホワイトボード、コピー機から珈琲サーバーまで、リモートワークやイベントに使える物がきめ細かくそろっています。ウェブ制作会社のオービックが、どうして「GoodWork首里」をつくったのですか?

私たちオービックは、2022年に創業20年を迎える小さなウェブ制作会社です。「クライアントの魅力や価値を発掘して、情報として発信し、集客につなげる」ことが事業の根幹です。「あなたの会社の魅力を再発見!」をテーマに、HP制作や集客支援を行っています。

創業20年という節目を前に、新たなチャレンジを始めました。これまで蓄積したウェブの知見やスキルを共有する動画配信やスクール事業です。その拠点となるのが「GoodWork首里」です。

個展、ポップアップストア、撮影会場…多彩な場所に

ご利用者まとめ写真

―直訳すると「良い仕事を首里で」という感じでしょうか。「GoodWork首里」では何ができるんでしょうか?

目指すは「人が集まる場づくり」です。首里という地の利もあって、オープン当初から様々な分野の方に、多様な使い方をしていただいています。

画家や伝統工芸を志すクリエイターの個展、物づくりを楽しむ人のポップアップストア、撮影会やインタビュー会場としての利用など…とても可能性を秘めた場所だと感じています。私たちも、ここがどんな場所に育つのか楽しみです。

「稼ぐ力」をサポートしたい

―オービックとしても動画配信やスクール事業など、新たなチャレンジをスタートさせています。

「GoodWork首里」という名前の通り、私たちは特にスモールビジネスに挑む皆さんに、「この首里で良い仕事をして価値を伝え、『稼ぐ力』をつけてほしい」と思っています。

私たちが喜びを感じるのは、HP制作や集客支援の結果が出て、それがクライアントの収入につながった時です。それは私自身が苦境に陥った経験から、「稼ぐ」大切さを痛感しているからです。

どんなにキレイごとを言っても、経済的に自立しなければ夢や目標は実現できません。だからこそ「GoodWork首里」で色んな人にチャンスをつかんでほしい。そのために今後、ウェブ運用や集客ノウハウを共有するコンサルタントや、スクール事業を本格始動します。

紆余曲折を経ながらも約20年オービックを継続してきました。その中で、結果を出すための体系的な知識や実践を蓄積してきました。個人事業主や自営業の皆さんに、それらのノウハウを伝えることで、共に収入を上げていきたいと思っています。

起業から約 20 年、クライアントと共に

―変化の激しいIT業界で事業を継続され、こんな素敵な場所までつくられて素晴らしいと思います。起業当時のことを聞かせてください。

オービックは2002年11月、私・稲嶺盛裕が創業しました。当初の社名は「Mobile
MarketingOVIC(モバイル・マーケティング・オービック)」(2013年に現在の商号に変更)。その当時は既に、沖縄でもHP制作会社が複数立ち上がっていました。

他社と同じことをしていてもダメなので、「携帯電話に特化したサービスで勝負しよう」と思い立ちました。創業前、たまたま子どもを送り迎えしていた英会話教室のご主人と仲良くなりました。その方は東京で広告代理店を経営されていたこともあり、折に触れてマーケティングの面白さを私に教えてくれました。

「ウェブと広告を掛け合わせたら、面白いことができそうだ」。そう思った私は、携帯電話を活用した広告企画やメールマガジンの配信、アンケートシステムの構築など、ウェブを使った集客に力を入れてきました。

手掛けた仕事は大小さまざま。中でも沖縄県⺠が大好きなバーガーショップ「A&W」(エイアンドダブリュ沖縄)様とのお付き合いは2004年以降、今なお続いています。その他にも県内の銀行、新聞社、大学、病院からも、HP制作や携帯電話を活用したウェブ広告の企画・運用などを任せていただきました。

https://www.awok.co.jp/ 2020年4月リニューアル

10 年目の「失敗」で苦境に

―「携帯電話を使った集客」。時代の先を読まれていたのですね。順風満帆じゃないですか!

実は…そうではありません。創業から10年ほどは「会社を大きくしたい」と営業に走り回っていました。ピーク時には社員7人と共に大手クライアントの仕事を複数手掛けるなど、成果と実績を積み重ねていました。

事態が暗転し始めたのは、約10年前のことです。多額の負債を抱え、自宅マンションを売却して社員への給与支払いや生活費に充て、妻が夜間のアルバイトで生活を支えてくれた苦しい時期もあったのです。

自宅を売却、残高 551 円だったことも

―自宅を売却して多額の負債?! 何があったのですか?

アップル社が2007年にiPhoneを発売して間もないころ、私は「これからはアプリの時代だ」と思い、事業の軸をHP制作からアプリ制作へと変えることにしたのです。多額の設備投資を行い、プログラマーを雇うなど、人的にも金銭的にもアプリ制作にリソースをつぎ込みました。

ところが、ふたを開ければ苦戦続きで結果が出ません。沖縄にはアプリ制作に何百万円も投資できる会社は少なかったのです。焦りに焦って、空回りばかりしていました。2年間でキャッシュフローは急速に悪化。資金繰りに難航し、銀行から借り入れを行い、家族4人が住む自宅マンションも売却しました。

―ビジネスでもパートナーである久子さん、社員として妻として、どう思われていたのですか?

あの頃は本当に大変でした。どんなに苦しくても社員には泣き言は言えないし、不安な顔も見せられません。私たち夫婦の給与は当然、何カ月もゼロでした。

でも、社員への給与だけは絶対に払うと決め、必死で支払い続けました。一度も遅らせたことはありません。それだけは頑張りました。必死でしたね。会社の銀行残高が551円しかなかったこともあります。まさに火の車でした。

「どん底」からの再起

―自宅を売却し、負債まで…。どうやって生計を成りたてていたのですか?

私たち夫婦は 2 人の子に恵まれました。苦境当時は育ちざかり。日々の食費や教育費も必 要です。ある日、妻から「アルバイトを決めてきた」と言われました。

独身時代、銀行に勤務していた彼女は、夜間にできる経理処理のアルバイトをすることに。 日中はオービックの仕事、夜はアルバイトを掛け持ちしながらオービックの経営と家計を支えくれたのです。

失敗から学んだこと

―過去にはそんな辛い時期があったのですね。どうやって再起されたのですか?

自分が舵取りを間違えたことを、素直に認めざるを得ませんでした。

2013年、再び舵を切りました。アプリ制作から撤退することを決めたのです。
私の誤算は、東京など首都圏の一部企業の動向を見て「これはいける」と判断したことが原因でした。大切にすべき沖縄の現状や企業のニーズを正確にリサーチできていなかったのです。

同じ過ちを繰り返すまいと、「地元企業が何に困っているのか」に徹底して向き合いました。そこから見えてきた「困りごと」は、以前と変わらない「HP制作」や「集客」だったのです。

顧客に寄り添い「原点回帰」へ

―「HP 制作」「集客支援」といえばオービックが創業以来、手掛けてきたことですね。

そうです。インターネットが普及したとはいえ、沖縄県内の中小零細企業やスモールビジネスの現場では、まだまだHP制作やウェブ運用に手が回っていない現状があったのです。

スマホ時代になり、集客の仕掛けにSNSや動画の活用が加わっているとはいえ、求められていることは創業当時から私たちが手掛けてきたことと、何一つ変わりませんでした。

「クライアントが求めていることに特化しよう」と決め、ブログサイトをカスタマイズしてHP機能を持たせる企画を考案し、安価に提供できる仕組みを整えました。まさに原点回帰です。

こうして小さな困りごとに丁寧に対応し続けた結果、業績は徐々に改善し、2018年には借り入れを完済することができました。

大切にしていること

―「どん底」から再起された経験が、新たなチャレンジにつながっているんですね。オービックとしてのこだわりやルールがあれば教えてください。

常に心掛けているのは「現場主義」と「データ重視」の姿勢です。クライアントのビジョンや困りごとを担当者から丁寧に引き出すのはもちろん、時には店頭や事業所に足を運び、店員や従業員に話を聴いたり、来店客の反応を確かめたりもします。

HP制作もウェブ広告も、作って終わりではありません。結果を出すには運用こそが鍵になります。良い時はもちろん、思うように結果が出ない時にも常にデータを示し、どうすれば良い結果を出せるのか、担当の方と一緒になって取り組んできました。

ご担当者様と共にサイトやコンテンツを育て、結果を出す―。その姿勢を貫き、クライアントから信頼していただいたことが、オービックを19年続けてこられた原動力だと思います。

チャレンジする皆さんと共に

―「GoodWork首里」に込められた稲嶺・真栄田ご夫妻の願いや、オービックの歩みを知ることができました。最後にこれからの目標をお聞かせください。

私たちオービックは「GoodWork首里」を拠点に、様々なビジネスに挑戦する皆さんをお手伝いしたいと願っています。

夫婦二人の小さな会社ですが、約20年で蓄積した知見や人脈など、何ものにも代えがたい「宝もの」に囲まれています。これからは各分野のプロたちとタッグを組みながら、皆さんの困りごとやプロジェクトをサポートしたいと考えています。

こぼれ話 〜社名のオービックってどんな意味?

私たちオービックの強みと得意は「集客支援」です。
その思いは社名に込めています。

「offer information(情報を発信する)」「value create(価値を創造する)」
それぞれの頭文字を組み合わせ、父が⻑年乗っていたHONDA車「CIVIC(シビック)」にちなみ、「オービック」(OVIC=「offer」、V=「value」、I=「information」、C=「create」)と命名しました。

「クライアントが気付かない魅力を発掘して、エンドユーザに届けること、それによって収入を上げるお手伝いをしたい」―。デバイスやツール、求められるスキルは刻々と変化しますが、集客支援という目的と私たちがやるべきことは、創業当時から変わりません。

カメラマン:古市英高
メイク:Yo-ko